仲谷沙弥香・伊藤憲孝/二人のピアニストによるリスト:巡礼の年(全曲・前編)全くスタイルの異なる二人のピアニストにリストの傑作をリクエストして、今日その演奏会が実現した。二人は同世代でありながら、私にとって大事な友人であること以外に接点はあまり無かったと思う。それでも、こうしてリストを介して同じ空間を分かち合うことになったのは、何と喜ばしいことだろう。仲谷沙弥香さんとは、これまでオルガンやチェンバロを用いて、主にバロック音楽の演奏会を積み重ねてきた。彼女のピアニストとしての力量も素晴らしいものであることがこの演奏会で示されたと思う。リストの音楽の中に自身の信仰を投影し、素直でありながら深い息遣いを感じさせる情念の発露となった。伊藤憲孝さんとは、5年前に「スクリャービン・ソナタ全曲演奏会」を催して以来、いつも新しい発見の喜びをもたらしてくれた。今回のリストも、まるで新たに作曲し直したと思うほどの斬新な解釈に瞠目するばかりだった。それはいまに生きる私たちへ音楽の可能性を更新しようとする野心さえも感じられるほどだった。それに今回は、岡崎隆一さんの楽曲に関連する美しい映像も加わった。出演者・関係者の熱い思いが凝集したいい演奏会となったと自負しています。聴きに来て下さったみなさん、関わって下さった方々、そして諸事情で来れなくても応援して下さった方々、ありがとうございました。また、来年もライブで会いましょう。
仲谷沙弥香・伊藤憲孝/二人のピアニストによるリスト「巡礼の年」(全曲・前編)

